ファウストー愛の剣士たちーの流れ

暗い檻に悪魔メフィストフェレスが閉じ込められている。
神の大事な天使を地上に落してしまったからである。

その周囲を白い布をまとった6人の天使が歌を歌っている。
その歌声がメフィストフェレスはたえらない、という。

悪魔メフィストフェレスは神と賭けをすることになる。
喜んで自らの魂を差し出させることができ、メフィストフェレスを悪魔と呼ばない人間に出会えたら、賭けはメフィストフェレスの勝ちである。
ハインリヒ・ファウストという男の魂を持ち帰ることを神に約束し、メフィストフェレスは地上へ降り立つ。

イースト国
その国では、人形劇が名物である。
その人形劇の中で、この国の王様やその周囲の噂話が語られる。
王様の歌
♪えっへん、吾輩は生まれながらの王様

ヘンリー大公の歌。

国王は、まつりごとに関心はなく、国の事はヘンリー大公にまかせきりである。
愛するお妃をなくしてから、本当の愛を見失い、絶世の美女を再びめとることを望んでいる。
この人形劇のシーン、人形は人形劇の人形ではなく、町人が町娘を、町娘が町娘を操ってみせる。
あの男はなんだ、ベソをかいてるみたいだ、町人たちが言いだす。
あの男の名は、ハインリヒ・ファウスト。多額の公金を横領した罪で、公開処刑が決まっている。
実際の黒幕はヘンリー大公だという噂だ、と町人たちは言い合う。

今にも処刑されそうなファウストのもとに、この国の王子、ヴァレンティンが通るかかる。
ハインリヒ・ファウストは、自分はただ偉い人の言うとおりにやっただけで、自分は金を横領してはいない、信じてくれ、と訴える。
ハインリヒ・ファウストは、年老いており、声は低い。
ヴァレンティンは、このように憶病な男が、公金を横領などという大それたことをするはずがない、誰か、他に糸を引いた者がいたのではないか、と疑うが、ヘンリー大公が一つの罪を許していては、国民に示しがつかないと、処刑を強制執行しようとする。

衛兵の銃はかまえられ、いよいよ処刑させそうになるハインリヒ・ファウスト
そこで、時が止まる。
悪魔メフィストフェレスが時を止めたのである。
メフィストフェレスは、ファウストに、命を助ける代わりに魂をもらうが良いな、と持ちかける。
ハインリヒ・ファウストは、命が助かるなら、何でもやる、と言う。
メフィストフェレスから、その言葉に偽りははないか、と問われると、
ハインリヒは「ない!ない!」と叫ぶ。
このとき、ハインリヒ・ファウストは、処刑のために布を顔にかけられており、
悪魔であるメフィストフェレスの姿は見ておらず、メフィストの魔力で縄が解かれ、顔を覆っていた布を取ることが出来て、はじめてメフィストフェレスの姿を知る。
メフィストの姿を見て、ハインリヒ・ファウストは、「お前はなんだ、妖怪か、妖怪にしてはずいぶんと綺麗な女だ」と言葉にする。
メフィストフェレスは「私は女でも男でもない」と言ってのける。
メフィストはハインリヒに、私がその魂買いましょう、という。そして、ひとつだけ長いを叶えてあげよう、という。
ハインリヒは命を助ける上に願いを叶えて貰えるなんて、といぶかしがるが、
メフィストに、契約すれば、お前の願いは叶うかもしれない、どうする、と迫られる。
ハインリヒは迷うが、「この人生、大したことはなかった。もしも願いがかなうなら、今度こそ満足のいく人生を送りたい。」とサインすることを決める。
メフィストがハインリヒ・ファウストに再び契約書を渡すと、天使ミカエルが登場し、ハインリヒ・ファウストに「悪魔の言うことをきいてはいけない」と忠告する。
それを受けて、ハインリヒ・ファウストは、自分の目の前にいるのが、天使と悪魔であると知る。
必死にメフィストとハインリヒの契約を止め、時を元通りにしようとする天使ミカエルを、
メフィストは攻撃をする。

出よ、とメフィストフェレスが、自身の分身である、オフィストフェレスを召喚する。
上手通路から、オフィストフェレスが「お呼びでしょうか」と出現する。
オフィストフェレスは、持っている剣で、ハインリヒ・ファウストの指を切りつけ、契約書に血の捺印を強いる。

これで、私たちは一緒だと、メフィストはハインリヒ・ファウストの背中を打ち、オフィストに手をひかれて、3人で階段を登って行く。
天使が止まっていた時を戻すと、イースト国の面々は、高いところに移動している、ハインリヒと悪魔、剣士をみつけて大騒ぎをする。
天使ミカエルが、どうかあの方(ハインリヒ・ファウスト)に神の御加護がありますように、と祈る。

メフィストフェレスからの命として、オフィストフェレスとハインリヒは、階段を運ぶ。
ファウストは疲れた、と、階段の頂上に登り、休憩を取ろうとする。
人間は悪魔と違って疲れるのだ、水をくれ、とオフィストフェレスに頼む。
オフィストフェレスが水筒を差し出すが、ハインリヒは「届かない」と示す。
オフィストフェレスが階段を一段登って、再び水筒を差し出すが、また「届かない」と自分は腰を上げようとしない。
オフィストフェレスは、階段を上り、ハインリヒの頭に水筒をぶつける。
いてえな、とファウストがオフィスとをはたくが、はたき返される。

ハインリヒ・ファウストは、今頃、あのメフィストフェレスはどうしているのか、とオフィストフェレスに尋ねる。
オフィストフェレスは、メフィストフェレスはどんなものにも姿を変えられる、今頃、鳥になって、空を飛びまわっているかもしれない、と言う。
それを聴いたファウストは、「オレも空を飛びたい。」と言うが、
オフィストフェレスは、それはできない、口惜しいが、人間、お前と一緒だ、と吐き捨てる。
ハインリヒ・ファウストは、オフィストフェレスにぶつぶつとしゃべってばかりで、お前は女の様な奴だ、という。

突然、夜光のマスクをつけたあやかしが、あらわれる。
ハインリヒ「なんだ、あれ、顔が無い!」
ハインリヒとオフィストフェレスを囲みながら、ダンスを踊る。

あやかしにおびえ、オフィストフェレスにくっつくハインリヒ。

ハインリヒは腰を抜かし、オフィストフェレスの足にすがる。
そんなハインリヒをうっとうしそうにしながら、オフィストは華麗な身のこなしで4匹のあやかしを退ける。

オフィストフェレスがあやかしを退けると、
奥から、派手な姿をした長身の人があらわれる。

彼女はこの森の支配者であり、さきほどのサルのあやかしの主でもあった。
ローズという森の主は、わたしのかわいいおサルちゃんになんてことを、と憤る。
そこへ、メフィストフェレスがあらわれ、私の事を忘れたか、その男は、私の主だ、とローズに告げる。
メフィストフェレスとローズは旧知の仲らしい。


「俺はメフィストフェレスの主だ」
と調子に乗るハインリヒの尻をローズが突く。

メフィストはローズに頼みがあると言う。
ローズの持っている命の妙薬を貰い受けたい、という。
ローズは弟子の木瓜を呼び、メフィストと奥の蔵へ入って行く。

先に出て来た、ローズがメフィストはその昔、王女だったという説明をする。
人々がすべてを悪魔のせいにした、

新しい自分に変わるためには、体にたまっている悪を外に出すことが必要、
お前の悪を吸い出してやる、と見本をオフィストフェレスで示す。
その後、ハインリヒの悪を吸い出し、水を与える。
命の妙薬は、人間が生まれる前のへその黒焼き。
ローズは助手の木瓜に妙薬を飲ませるのを手伝わせ、木瓜はもう水は駄目です、と水を与えない。
ハインリヒは苦しみ、舞台奥へ。
♪ローズの歌
気高き力 …べし
ローズが歌い、あやかしたちが踊るなか、
奥から黒い布をまとったファウストが鏡の様なセットにスタンバイする。

あらわれたファウストは、緑色のジャケットに茶色のブーツ姿。

ファウスト「なんだこれ、オレはこんな美男子じゃない」

美男子に生まれ変わったハインリヒ・ファウストをみて、
メフィストがこれからは姓を名乗り、名をファウストとするはどうか、と提案する。

メフィストフェレスはネオ・ファウストの誕生だ、と宣言する。
ファウストは自信がみなぎってくるようだ、と意気込む。

一方、王宮では、天使ミカエルが、姫のマルガレーテに、あなたはもうすぐ、ファウストという名の運命の人に出逢います、と啓示をする。
天使ミカエルの歌
♪思いだしてマルガレーテ あなたが生まれた晩
誰かがささやいたでしょう 
いつかお前は出逢うだろう ファウストという名の男に
清々しく勇気にあふれ やさしい…

窓から降り立った天使とマルガレーテが会話をしていると、乳母のマルタが部屋に入ってくる。
マルタには、天使ミカエルの姿は見えていない。
マルタはミカエルに操られ、マルガレーテを仮面舞踏会に参加するよう促す。

今日は年に一度の復活祭の日。
仮面舞踏会の会場では、変身したファウストに人々が熱い視線を送る。
ファウストは、こんなに注目されるのははじめてだ、と興奮する。

ファウストとマルガレーテが出逢う。
ファウストはマルガレーテの仮面を奪って、以前遠くからお姿を拝見したことがあります、と伝え、仮面を返して一緒に踊る。

王女マルガレーテに出会えたことを興奮して振り返るとそのにはマルガレーテはおらず、オフィストフェレスが立っている。

ファウストはマルガレーテ王女を自分のものにしたい、とメフィストフェレスにねだる。
メフィストフェレスは、あのマルガレーテだけはやめておけ、お前を「破滅」させるかもしれない、と警告する。
あの女を手に入れるためにはそれこそ、王にならないかぎり無理だ、というメフィスト
ファウストは「では、王になってみせる」と宣言をする。
だいそれたことをいうファウストメフィストはあっけにとられながらも
ファウスト、ついておいで」と言うが一旦、立ち止り言いなおして
「ご主人さま、参りましょう」と示す。

メフィストフェレスは本来は天使の役目である恋のキューピッドを引き受けることになる。

このシーンの最後で、オフィストフェレスとファウストの力関係も若干かわり、オフィストフェレスがファウストを「ファウスト『様』」と、主として呼ぶようになる。

ここで、天使ミカエルとオフィストフェレスが出会う。
オフィストは、ミカエルにどうしてこんなところに、と問う。
天使ミカエルは、あなたたち悪魔が人間の心に巣食っているように、私たち天使も人間と共にあるのです、とすまして言う。
天使はオフィストに、愚かな人間でも人間は私たちに持っていないものを持っている、という。
それは何か、問うオフィストに、「それは、愛。人々が慈しむ心だ」と説く。

メフィストフェレスに手をひかれ、引き合わされた、ファウストとマルガレーテ。
そこに山賊があらわれる。
めったに外に出ないマルガレーテのあとをつけてきたのだ。
王女を誘拐し、親バカの国王から金をせしめてやろう、と言う。

マルガレーテは山賊に腹を打たれ、気絶し、山賊の肩に担がれてしまう。

オフィストフェレスが山賊に立ち向かい、最後にはファウストの手に剣を持たせ、まるでファウストが山賊を退治したかのようにみせる。
ファウストは「オフィスと、お前のおかげだ、礼を言うぞ」と言うが、
ヴァレンティンが現れ、妹を助けてくれて、とお礼をファウストに言うと、コロッと態度を変えて
「どういたしまして」と自分の手柄にする。
ヴァレンティンがファウストを王宮へ案内する、というと、
オフィストフェレスは遠慮する、というが、ファウストはせっかくのお誘いを断っては失礼だろ、とにこにことオフィストフェレスを振り向きながら、ヴァレンティンに付いていく。

王女の窮地を救ったファウストとオフィストフェレスは、王宮へ通される。

王子、ヴァレンティンが、ファウストとオフィストフェレスをどこかで見たことがあるような気がする、と言う。
公開処刑に合うはずが逃げのびたハインリヒ・ファウストだと知られては不味いので、ファウストはこの国に以前に来たのは、何年も前だ、と言い、
オフィストも、我らは流浪の民、この国には滅多に訪れたことはございません、と答える。

王様は、ファウストに、この国に仕官してみる気はないか、と問う。
ファウストは、お側に仕えるということですか、と確認する。
すると、王様は、
本当の剣士だったなら姫の婿にしよう、と言う。

王様とファウスト、マルガレーテがはけたあと、
王子、ヴァレンティンが、王はどうしてあんなことを、と考えていると、ヘンリー大公が、王様は、王位継承者であるヴァレンティンを差し置いて、ファウストを王にすげるかもしれない、と言う。
その事態を防ぐためには、異国のヘレネという女を連れてくるよう、ファウストに課すことにしようと提案をする。
ヘンリー大公は、ヴァレンティンに、ヘレネは所詮、異国の作り話、ヘレネの森へ行って、無事に戻った者は一人もいないという。
ヘンリー大公が自室に戻って独り言を言っていると、何かの気配がする。
誰だ、振り返ると、そこには、執事になり済ました男装のメフィストがいる。
メフィストは下がるように言われた後、ファウストのことを思う。
普通の男と思っていたが得体のしれない何かがあるような気がする、と。


翌日、ふたたび王宮へ参じたファウストは、国王から、次の満月までにヘレネ・タマモという絶世の美女を連れてくるよう、命を受ける。

ヘレネを召しつかえる事が出来れば、国王は不老不死になれる、というのである。

ファウストは私がヘレネを連れ帰ったあかつきには、マルガレーテ王女と結婚させて下さい、というようなことを言う。
周囲は滅多なことを言うでない、といさめるが、国王はこれを快諾する。
王女も運命の人であるファウストの申し出に喜ぶ。

ヘレネをとらえるために、ファウストとオフィストフェレスは旅に出る。

メフィストファウストに、みれば脚が震えているでないか、という。
ファウストはこれは、武者ぶるいだ、と言う。
今宵は年に一度のワルプルギスの夜
メフィストがいると、ヘレネは警戒して出てこないかもしれない。
メフィストは姿は見えなくても、ファウストのそばにいる、とファウストに伝える。
ワルプルギスの夜なので、きっと妖怪の王のヘレネも姿を現すだろう、と言う。

不快な音が鳴り響き、空を飛ぶあやかしがいる。

ヘレネの館へ着く。
現れたのは和服を来たヘレネとそのしもべの巫女たち、
ヘレナが舞い、地上へ降りてくる。その手助けを巫女たちが行う。
ヘレネが登場して、しばらくすると、ファウストの様子がおかしくなる。
ファウストの目はうつろで、うっとりとヘレネが動く方向から目がそらせない。

ファウストヘレネに何故ここに自分が来たのか説明しようとするが、ヘレネの魅力にうまく言葉をつむげなくなってしまう。
なんと美しい、としか言えなくなったファウストヘレネは、すべてを手に入れた私にそんな当たり前の言葉はいらぬ、と言う。
ファウストのにおいをかぎ、臭い、そなたからはえもいえぬにおいがする、と嫌がる。

せっかく来たのだから、私の館へ入れてあげよう、とファウストを誘惑する。
オフィストの止める声も聞かず、うつろな目のファウストは巫女に連れられ、気を失ってしまう。
オフィストの力はヘレネや巫女にはきかない。
♪巫女の歌
酒を 服を 裸の女が埋め尽くす
欲しや 飲みたや 
言われたや 心


メフィストフェレスが登場する。
メフィストは、こいつだけはお前にくれてやるわけにはいかない、と言う。
ヘレネはこんな男に何故こだわる、といぶかしがる。
メフィストがとにかく、この男はやらない、と言うと
ヘレナはその狼狽ぶり、この男、何かあるな、えも知れぬような魂の持ち主ではないか、と疑う。
メフィストが雲の糸の様なもので巫女たちを退け、窮地を脱する。

気を失ったファウストとオフィストを前に
メフィストは説教をする。
オフィストにこの有様はなんだ、近頃にお前はおかしい、というと
オフィスとは、わからなくなったのです。本当は悪魔は人間の心にしか存在しないのではないか、ある者が言ったのです。愚かな人間は私たちにないものを持っていると、と説明をする。
メフィストが私たちにないものとはなんだい、と尋ね、それは、とオフィストが答えようとすると、ファウストが目を覚ます。

ファウストが寝ぼけており、状況がわかっていない。
ヘレネは、と尋ね、ヘレネは美しかった、髪の毛がこんなに長くて、と言いながらメフィストに寄る。
メフィストは、ファウストにしっかりおし、もっとお前は努力をしないと、と説く。
ファウストが、メフィストには感謝しているよ、これからも、面倒を見てくれよな、と言うと、メフィストに平手打ちをされる。

メフィストは、もうどうでもよくなった、とオフィストと共にファウストのもとを去ろうとする。
ファウストメフィストを思いとどまらせようと、待って、オレに力を貸してくれ、約束したんだ、ヘレネを連れて帰ると。一度した約束を守るのが人の道っていううものだろう、俺に愛想を尽かしたならそれでいい、これはやり遂げなくてはならないことなんだ、と語る。
ファウストの「お前と俺は契約したじゃないか」の言葉にメフィストは目を見開く。
メフィストはオフィストに、もう一度この男にかけてみる気はあるか、と問う。
オフィストは、もちろんです、と答え、メフィストに頭を下げる。
ファウストは、俺はヘレネを連れて帰る、愛するマルガレーテのために、と宣言する。
ファウストメインのテーマ

一幕終了。

二幕

国王はファウストの帰りが遅いことを怒っている。
期日までに戻らねば、ファウストを国外追放にする、という。

なかなか戻らぬファウストをマルガレーテは心配する。
そこへ天使ミカエルがやってきて、一緒に歌い出す。
♪愛の囁き

ステージ上の段でミカエルとマルガレーテが歌い
下段では、オフィストフェレスがファウストに剣の稽古をつけている。
オフィストは利き手ではない左手で剣を持ち右手は背でにぎり、ファウストにハンデをつけている。ファウストもオフィストも上着を脱いで動きやすい服装になっている。最初はスローモーションの動きで、徐々に曲に合わせてすばやい動きをするようになる。
ファウストとオフィストフェレスは背中合わせで、笑い合う。
ファウストは少しずつ、剣が上達してくる。

剣の稽古に一呼吸おいていると、オフィストフェレスはファウストにあなたはおかわりになられた、という。
メフィストから、ヘレネの動きを封じる呪文とお札を授けるよう言われている、と話していると
そこへ、先日の山賊たちが現れる。
襲われるファウストだが、オフィストは段の上で座っている。
手をかせ、というファウストに「あなたは誰よりも強い!」と叫ぶ。
それを聴いて、馬鹿にしたように笑う山賊だったが、実際にファウストの剣の腕は上達しており、刃を上向かせて山賊の動きを封じる。

あなたは変わったと言いながら、オフィスト山賊にとどめを刺そうとする。 
それをファウストは「やめろ!」と制する。
今殺さなくてもいい、と言うファウスト
オフィストはいつまたおそってくるやもしれません、という。
その言葉に山賊の一人は首を振ってみせる。
命はうばわない、とするファウストに感銘を受けた、山賊、アバレとカスメはファウストに忠誠を誓う。
そこへ、不気味な笑い声で登場する者がいる。
ローズである。
ローズはメフィストから、ヘレネをとらえる、秘薬と呪文を預かってきている。
それを授けるのには条件があるとして、
ローズはメフィストからの最後の試練だとして、山賊アバレとカスメを操る。
アバレ・カスメが操られる合図は舞台冒頭の人形劇の人形役の動きと同じ。

この二人を切る事が出来れば、ヘレネを封じるお札と秘薬と呪文をゆだねる、とされ、ファウストは抵抗をしていると、
オフィストが「愛する人と約束をしたんじゃないのですか」と問いかける。

オフィストに約束の事を持ち出され、ファウストはアバレとカスメを斬る。
ファウストはとうとう人を殺してしまった、もう俺には怖いものなどなくなった、と言う。
やりましたな、とローズが言うと、アバレとカスメは生き返る。

ローズからお札と秘薬を受けっと他ファウストと一行はヘレネのもとへ向かう。
ローズが、あの者が今に悪の華を咲かしてくれようぞ、と言う。

ヘレネの館にたどり着き、ファウストは再びヘレネと対峙する。
ヘレネの力はすさまじく、倒れそうになるが、
ヘレナがファウストを「美しい人間の男だ」と眺めて、目を離した一瞬の隙をついて、ファウストは秘薬をヘレネにかける。
秘薬はヘレネの目にかかり、ヘレネは痛い、何も見えないと苦しがる。
ファウストは「女狐め、それはキツネの大嫌いな犬のしょうべんだ」と言いながら、お札をヘレネの背にはり、九字を切る。
お札と九字に寄り、ヘレネはとらえられる。
オフィストは眷属のキツネがやってくる前にはやく行きましょう、と言って、ファウストを急かす。
一人になったオフィストは「それでイースト国も滅びるだろう」とつぶやく。
オフィストは「私もあの男のように自分のためだけに生きてみたい」と願う。

イースト国
♪町娘の歌
きいたかい 知ってるかい あのファウスト
きいたかい 知ってるかい 国王様の無理難題を 見事解決
噂にたがわぬ絶世の美女 ヘレネを連れて 凱旋だ

ヘンリー大公はファウストが本当にヘレネを連れ帰ったことに焦る。
そこへ、オフィストフェレスがあらわれる。
オフィストは、ファウストは悪魔の手先です。ヘレネの背中に貼られているお札をはがせば、ヘレネがにっくき国王を食べてしまうだろう、と教える。
ヘンリー大公は、敵なのに、なぜそのようなことを教える、もしや罠では、と疑う。
すると、オフィストはそこまで言うなら教えてしんぜましょう、実はあの男の正体…
とヘンリー大公に耳打ちをする。

翌日、ファウスト一行はヘレネを連れ帰り、王宮でかしづく。
国王がファウストの望み通り、王女ををそなたのもとへ嫁がせよう、というと、
お待ちください、とヘンリー大公とヴァレンティンが出てくる。
その男の正体はこの国の公金をだまし取っていたハインリヒ・ファウストという者だ、と問だたされ、ファウストは衛兵に拘束される。
観念したファウストだったが、盲目的にファウストを愛すマルガレーテは、国王に
それは何かの間違いです、あの方は清く美しい心の持ち主だと言う事は父上も御存じでしょう、と必死に許しを請おうとする。迷う国王にヘンリー大公は、証拠にそのヘレネの背中に貼っているお札を取ってしまえば、ファウストが悪魔の手先だと言う化けの皮が剥がれる、という。
ファウストは、それだけはおやめください、そんなことをしては、ヘレネの封印が解け、この国に大きな災いが起こります、と言う。
国王からそれは本当か、と問われたヘレネは、あの男が言っている事は、自分の罪から逃れたいがための嘘、このお札をはがしてくれたなら、私は国王様のものとなります、さあ、お札をはがしてください、と国王を誘惑する。
自らの欲に負けた国王はヘレネのお札をはぎ、封印を解いてしまう。
封印が解けるやいなや、ヘレネの巫女たちが召喚され、イースト国に暗雲がたちこめうる。
うつくしい魂をいただく、とヘレネと巫女たちは次々と国民を襲う。
ファウストは、惑わされ、ヘレネを切ったつもりが、マルガレーテとヴァレンティンの目の前で国王を切りつけて殺してしまう。
巫女は人間が私たちを切る事は出来ない、という。
ヘレネは天変地異とは自然、争いは人々の欲望から怒る、という。
ファウストは、ヴァレンティンにマルガレーテを連れて早く遠くへ逃げるように言う。

みんなが逃げた後、ファウストは一人巫女と戦う。
扇子を武器とする巫女をはがいじめにするが、巫女は余裕の笑い声をあげる。
ところが、ファウストが巫女の目を切ると苦しがり「何故、たましいのある場所がわかった」ときく。
ファウストが、目はこころのまなこという、と告げると、巫女の一人は苦しみながら倒れる。

ファウストはヴァレンティンを追いつくと、ヴァレンティンはマルガレーテを先に行かせ、、「父上の敵」とファウストを切ろうとする。
オフィストが時を止め、ファウストの窮地を救う、ファウストに剣を授ける。とどめをさすよういうオフィストにファウストはヴァレンティンがマルガレーテの兄なので、自分は切る事は出来ない、とあらがう。
しかたなしに、オフィストはファウストの意思とは関係なくファウストを操って、ヴァレンティンを斬らせようとする。
ヴァレンティンは、さすがあやかし、凄い力だ、と恐れの目を向ける。

どこへ、天使ミカエルが登場し、それでは、憎しみしか生まれない、ファウストを止められるのです。という。オフィストがミカエルに、天使の言葉ならもう届かない、あの男は悪魔メフィストフェレスの魂のものになろうとしている、告げる。
天使ミカエルはファウストを止める事ができるのは、オフィスト、あなただけ、本当の人間の心を伝えるのです、それは愛、と伝えて去る。
オフィストは、ファウストに、だが、あなたは生きるのです、あなたはこの国の王になる人間なのですから、この剣をあなたに授けます。あとは、あなたのお心次第です、これは試練とは違います、あなたの心が憎しみに支配されてヴァレンティンを殺してしまえば、もうもとには戻れない、それでも私はお前の心を信じてると言って去る。
オフィストは、愛、それがお前には必要だという。

ファウストの耳にオフィストの言葉は届いていたが、
ヴァレンティンの剣を避けるために宙返りをしていると、剣を落とし、手を斬られてしまう。
追い詰められたファウストは剣を手にして、赤いライトに照らされ、ヴァレンティンを斬る。

ヴァレンティンを斬ったときには恐ろしい顔をしていたファウストだが、斬り終わった後、剣を見て我に返る。
もう、何もかもおしまいだ、つぶやく。

王宮では、ヘンリー大公が王宮にある財宝を盗み出して逃げようとしている。
そこへ居合わせたマルガレーテと乳母のマルタ。
乳母のマルタは、ヘンリー大公に王女をお守りするのがあなたの役目、国への忠誠を忘れたか、と説くが、マルタも欲に目がくらんでしまう。
ヘンリー大公とマルタが金の延べ棒を運び出そうとしていると、そこへファウストの家来となったアバレがとおりかかる。
結局、思い財宝を持つことが出来なかったヘンリー大公は身ひとつで逃げ去っていく。

ミカエルが危なくなっていると、オフィストがミカエルを守る。
オフィストハ天使を助けるとは、この俺もやきが回ったな、とつぶやく。
天使ミカエルがマルガレーテを安全な場所へ行くよう促し、
マルタに「今は私の姿が見えていますね?」ときき、マルガレーテのそばにいるように、と命じる。
オフィストはこのままでは、ヘレネの怨念がこの国中を覆ってしまう、その前におれたちにはすべきことがある、という。
天使ミカエルは、やっとわかってくれたのですね、とオフィストを見る。
悪魔も天使も、もとは同じ魂、二人が刺し違えれば、そこには静寂だけが残る、と言われている。

二人は抱き合い、剣を逆手に持って、刺したがえる。
オフィスト「ミカエル、お前と出会えて良かった。」
ミカエル「私もです」
ミカエルが逝ったあとに、オフィストも逝く。
オフィストの最期のことばは、「メフィストさま」
壇上の幕が落ちる。

乳母と逃げるマルガレーテ。
それを追ってきたファウスト
「マルガレーテ、無事でいてくれ、生きてさえいてくれれば、命に代えても君を守る」
お供をさせている、若者から、陛下、と話しかけられる。
いつも供をさせてすまない、そちは満足か、夢は何だ、ときくと、従者は、陛下の様な勇気のある剣士になることです、叶えて見せます、という。

場面転換すると、ファウストはふかふかしたダルメシアン柄のローブを着ている。
カスメが戴冠式を終えたあなた様を民衆一目が見ようとこんなにも集まっています、と言い、ファウストとアバレカスメ従者は、民に手を振る。

そこへメフィストが現れる。
メフィストファウストに、満足されたのですね?まだ何か?と尋ねる。
ファウストは、生きると言う事は苦しい、失ったものは大きい。新しい王国は大きな命の犠牲で成り立っている、という。
メフィストはこの民衆の感性は地獄で苦しむ人の声でもある、という。
メフィストは、ファウストに、オフィストやミカエルの事は忘れてしまっただろう、と言う、。
ファウストは忘れていない、と言うが、
人間は忘れゆく生き物、だが、私は悪魔だから、忘れる事は出来ない。
まだ、人生に納得がいってないようなら、何故、以前のように私に言わぬ。
以前のお前はすがって何もかも叶えて来たじゃないか、とファウストに詰め寄る。
ファウストは、マルガレーテに会って抱きしめたい、と思っていたが、それだけは、メフィストには言えなかった。
メフィストは、それは何故か、問うと、ファウストは、この話はよそう、と言ってはぐらかす。

メフィストが、乳母のマルタよ、いでよ、と手を叩くとベージュ色の布を頭に巻いたマルタが出てくる。

メフィストは、ファウストにホントぷに満足できるかわからないが、後悔するでないぞ、と言うと、ファウストは、わかった、と言って、乳母とメフィストに着いていく。

通された教会にはティアラを取ったマルガレーテがいた。
マルガレーテはファウストをみて、人殺し、お父様やお兄様を殺した悪魔が私を殺しに来たのですね、許して下さい、こんなに若いのにこんなに元気なのにと欲の部分をさらけ出しながらあとずさる。
ファウストは、僕の事がわからないのですか、あなたをお妃に迎えようとしてやってきたのです、さあ、帰りましょう、と呼びかけるが、
マルガレーテは、外には悪魔がいっぱいいる、あなたとは一緒にはまいりません、と言って逃げ回る。

メフィストは、もういいでしょう、その女はもはや人間ではない、気がふれてしまったのです、と告げる。

そこに、教会に火がつけられ、マルガレーテは神の裁きに従います、と自ら炎のなかへと走り出す。
メフィストがとめるも、ファウストもマルガレーテを追って火の中へ走って行く。

♪心の叫び
メフィストが人の愚かさと、全く別のものから反対のものが生まれることを歌うと、
ファウスト火の中から顔を煤でよごして無事に戻ってくる。
マルガレーテをみつけられなかったという。
俺はもうすぐ死ぬ、だからその前にお前にこの魂をあげるよ、お前には生きるという大切さを教えて貰った、会い、人と人が慈しむ心を教えて貰った、という。
ファウストは、前にメフィストにマルガレーテに会いたいと言えなかったことに触れ、おれはいつしかお前のことを好きになっていた、だから、マルガレーテに会いたいとは言えなかった、と伝える。
今日からお前を悪魔と呼ぶことはよそう、「神よ、メフィストフェレスは悪魔なんかじゃない、こんなにも素晴らしい魂はない」と神に宣言する。
メフィストは、そんなことは言わないで、あなたは生きてまだすることがあるのよ、と言うがファウストは俺はこの人生に満足している充分だ、といってきかない。
メフィストはそんなことは言っては駄目と、言うが、ファウストはオレの魂を受け取ってくれ、と言って、命尽きる。

メフィストは、いつのまにか愛を知ってしまった、人間みたいに、とつぶやき、
ファウストの魂よ、天国へでもどこへでもとんでおいき、とファウストの魂をふわりと宙に飛ばす。

人間出るファウストが自らの心の闇に打ち勝ったのだ、神よ、間違うでないぞ、その人間こそが素晴らしいのだ、といって、ひとり階段を上って行く。


暗転して、ファウストが目を開ける。階段を上って行き、開場を見渡して歌い出す。
下手からオフィストフェレスが出てきて歌に加わり、その後、全員のキャストが出てきて、合唱する。
ファウストは出てくるキャスト一人一人に目を合わせる。
三方礼をして
カーテンコールでキャスト全員出てきて手をつないでお礼をして、おしまい。