広島に原爆を落とす日 広島アステールプラザ中ホール 18時公演

開演時間5分前に、原爆被害者の団体から、錦織さんと戸塚くんに花束の贈呈がアナウンスされる。
被爆者の方が出てくるのかな?と思ったら、ラフな格好をした女の人が出てきて、紙面を読む。

内容は、惨劇を二度と起こさないように、と、また錦織一清様演出、戸塚祥太様出演、松竹様配給の…と敬意をあらわしてくれていた。

紙を読み終わり、名前を言うところになって、彼女が、地元の大学4年生(4回生と言っていた)だということがわかる。

もう1名、花束を贈る地元の人が出てきて、それぞれ、錦織さん、戸塚くんに花束を渡す。

錦織「フォトセッションです。写真を…」
と言うとスーツの男性がスマホで花束贈呈をパシャリ。

錦織「ボク入ってますよね。」

戸塚くんは舞台の準備に入らせていただきます、とアナウンスが入り、
錦織「とっつー、あとでね!」
戸塚「ハイ!」と敬礼。

錦織さんが挨拶。
錦織「広島に来るのはコンサートをしていた頃なので、おそらく20年…今からちょうど、10年くらい前になりましょうか」
とボケてみせると、もっと前でしょと会場は笑う。

錦織「自分の車で、自分の運転で来るというのははじめてで…大丈夫、免許は持ってます。」再び会場が笑いに包まれる。

錦織「自分の運転で、今まで東京~大阪が最長だったのが、今回の広島で記録更新です。本日、広島に宿泊が出来ないので、大人の楽しみは出来ませんが。」

錦織「この『広島に原爆を落とす日』は、つか作品のなかで最も難しいといわれている作品です。稲垣、今回が戸塚バージョンとなって上演します。当時の史実とは異なるところもありますが、つか作品のオリジナリティを大事にお伝えしたい。」

本編


鳩の緞帳が降りてからの4度目のカーテンコールでキャスト全員で手をつないで、一歩さらに前、舞台ギリギリまで出て、
戸塚「有難うございましたっ!」
と大きな声で言うと、早織さんも中くらいの声で「有難うございました」と言っていたのが印象的でした。


さて、感想。

戦時中のような仮名遣いの「オ触リ禁止」などの旗で一気に世界に引き込まれる。
「Don't think feel!」
の文字にも言われなくとも、という意気込みになった。


「どう日本をデモクラシーへ導くか」がテーマでもあるのか、デモクラシーは民主主義としてとらえていいのかはわからない。

男のなりふりかまわずはみっともないが、婦女子の一途さなら、という台詞にほぉ、と思った。

夏枝のあなた、あなた、と「あなた」を繰り返す台詞に死を予感した。
あなたを繰り返すものとして、特攻隊の遺書を連想させて、あなた、は繰り返すと、「連れ合い」としての「あなた」ではなく、もう会えない人、死にゆく人への呼称のように聞こえるのだ。
また、あなたと呼び掛けている側もまた死に近い立場であるように感じる。


ギブミー納豆のくだりは、勝戦国になろうとするというのはなんと傲慢なんだろう、と感じた。

子どもたちの笑顔の前には4,50万人の子どもを含んだ犠牲が必要なのに。

日本は負けるべきだったが、降伏を促すために本当に原爆は必要だったのだろうか、という疑問が残った。


隊員たちが、原爆投下の地に自らの故郷を差し出すところに考えさせられた。

「札幌ときましたら、小倉にも」
という台詞がある。
小倉は実際に長崎に投下された原子爆弾ファットマンが本来落とされる予定だった場所であるし、もし広島原爆投下の日に悪天候であれば、次の目標とされていた土地、というリアリティがある。
そのリアリティがある土地を紛らせるというのが、ぞっとさせられた。
新潟もまた。

と、同時に名古屋で手羽先がからっと揚がりますという台詞には、その頃はまだ手羽先は名物ではなかったのでは、と思わされた。


バックの幕に大きな月が映されて、その下に置かれた刀がライトに照らされてとても綺麗だった。